2019.04.25

食べる

となりの街からやってくるラーメン。移動販売車が繋ぐ街とのカンケイ性

 

「結局、自己満足なんですよ。お客さんがラーメンを食べて喜んでくれる顔が見たいから」

なぜラーメンの移動販売かを聞くと、にこやかに加藤さんは答えてくれた。

豊後大野市には月曜、木曜、土曜の週3回ほど、目をひく黄色のキッチンカーが回る。佐伯市宇目にある創業23年のラーメン屋『三国ラーメン』の移動販売車だ。とんこつをベースとしたラーメンで何年も移動販売に通う人もいるほど人気を博している。この移動販売車を切り盛りするのが、加藤寛之(36)さん。

「もともとは母がお店の味をもっと広めようと佐伯市内でラーメンの移動販売をはじめました。弟もそれに続き、いまは私が弟の跡を引き継いで6年目になります」

大工だった父親が料理の道に進みたいと、加藤さんが中学生のときにラーメン屋を開業した。以来、父親が作るラーメンの味の虜になった加藤さん。居酒屋やキャンプ場で働き、30歳になるタイミングでラーメン屋を継ごうと考えていた。

「移動販売車はフットワークが軽くて、いろんな世代のいろんな人に出会える。そういう方々とお話しするのは楽しいですし、お店が遠くて行けない人にできたてのラーメンをお出しできる。店は親父がやっているし、自然と移動販売車でラーメンの味を広めるほうを選んでいました」

加藤さんは、地元のスタンドのアルバイトをしながら、移動販売を続けている。

「やっぱり自分が食べて美味しいと思うから、お客様にも食べてもらいたいんですよね。そうじゃなきゃ、続けていくことはできないですよ。この仕事が好きだから続けていけると思いますし」

 

電話一本でOK!馴染みになればLINEで!

普段はチャルメラの音を鳴らしながら回る三国ラーメンの移動販売車だが、近辺を回っているときには電話一本で家の前まで駆けつけてくれる。馴染みともなれば、無料電話アプリ「LINE」を交換していて、LINEでもOKだそうだ。

地域の集まりや総会でもあれば、公民館の前にも来てくれる。ラーメンの注文数に関係なく駆けつけてくれるのは、加藤さんの心意気を感じる。

「ラーメントレーを用意していますが、ご自宅の陶器どんぶりを持ってきてもらったほうが熱も冷めなくて熱々のままラーメンをお出しできるんですよね」

熱々のラーメンを届けるために、佐伯のお店からずっとスープを温めながら来る。それも三国ラーメンを楽しみに待っていてくれるお客様のためだ。

自宅で、できたてのお店のラーメンを食べられる至福の時間。

「家ですぐ食べられるラーメンって最高の贅沢だと思うんですよね。だって本来お店に行かなければ食べられないラーメンが家の前で作ってくれて、しかも熱々のまま自宅で食べることができるんですから」

 

その土地にお店がなくとも、愛される屋号とラーメン

加藤さんの移動販売車に6年近く通う常連客は言う。

「孫や娘がこのラーメンを食べに毎週帰ってくるんだよね。で、決まって私がいつも買いに来るんだよ」

一杯のラーメンが繋ぐ家族団欒のひととき。移動販売ともなると毎日同じ場所にあるわけではない。だからこそ、地域を回る移動販売が作る一杯のラーメンは格別なのだろう。

大手を広げて加藤さんの移動販売車を呼ぶ子どもの姿もあった。まるで楽しみにしていた移動式のサーカスを待つかのように、振る手にはワクワクする気持ちが現れていた。その光景は世代を超えて地域に愛されていると感じる一面だった。

「あのお宅もずっとラーメンを頼んでくれるご家庭で、古くからのお客様なんですよね。ありがたいですよね」

『三国ラーメン』というラーメンを売る移動販売車。その屋号は知る人ぞ知る名前だが、ラーメンの味は確かだ。屋台や店舗とは違い、車で移動しながらできたてのラーメンが地域に愛されるには移動販売というよりも確かな”味”という信頼がないと続かない。加藤さんは、信頼を勝ち取った「ラーメン」というコンテンツを武器に地域に愛されるラーメンを今日も作り続けている。

 

名前 三国ラーメン
営業時間 18:30ごろ〜22:00ごろまで
電話番号 090-9599-3331
営業場所 月曜 豊後大野市三重町周辺
火曜 佐伯市蒲江周辺
水曜 佐伯市内
木曜 豊後大野市清川町〜緒方町周辺
金曜 大分市宮河内周辺
土曜 豊後大野市三重町周辺
定休日
取材・文=髙橋ケン