2019.05.24

住む

そこにあったのは懐かしさと安心感。ローカル発のプロジェクト「手しごと商会」から地方のこれからを考える

わたしたちのまちには、近ごろおもしろいことや人が集まりはじめている。

そのひとつが、「手しごと商会」。

豊後大野市在住のヨガインストラクター・森かおるさんがはじめたローカル発のプロジェクトだ。

どうしても、あたらしいもの、そとのこと、に目を向けがちな今。時代によって変わるものは、きっとそれだけじゃない、はず。

森 かおる

手しごと商会主宰/ヨガインストラクター
1971年生まれ。豊かな自然を求めて豊後大野市に20年暮らす。ヨガクラスの仕事の傍ら、日々の暮らしが活き活きと豊かになるような味噌作りや手しごとワークショップなどを不定期で開催。 2018年、これまでに出逢った手しごと名人と呼ぶにふさわしい〝おじいちゃん〟〝おばあちゃん〟に作り手としてご協力をいただき、素朴な生活道具のプロダクトにチャレンジ。ローカルサイズなモノづくりを創造中

原点に返って気がついた手しごとの美しさ

2018年の夏、森さんは秋に迫った地域イベントの実行委員として、打ち合わせに参加することになった。どんなイベントにもよくある話だが、回数を重ねるにつれイベントの方向性や内容を見直すこととなり、今までとはちがった視点を持つ森さんの意見や考えを参考にしたいと思ったのだろう。

参加したイベントの打ち合わせでの提案は、そのほとんどが実現できなかったという。このままでは終われないと自らも動き始めることにした。もし、自分が市外や県外からこのまちにきたとして最初に興味を持つと思うものは、”そこにしかないもの・こと”だと強く感じたそうだ。そこで目をつけたのは、長年地域でサークル活動をされている方々の「手しごと」の技術と、それらに使われていた地域の素材だった。

職人や作家でこそないが、長年その道を貫いてきた方々の手しごとには素朴な美しさと魅力があった。そこで、自ら手しごとをしている方々に、ほんの少しだけデザインや色の組み合わせなどを提案し形にしてもらい、販売することにした。それが「手しごと商会」のはじまりだ。森さんの提案に多くの方が賛同してくれて、次々とアイデアは形になっていく。

 

そこにあったのは懐かしさと安心感

なぜ地域の”手しごと”に注目するようになったのか。そこには森さんのこれまでの体験と日々の暮らしが深く関わっていた。

「もともとおばあちゃん子でね。よくセーターをほどいては、また違うものを編んだり、人形なんかをつくってくれていたのよ」

身のまわりにはいつも”だれか”がつくってくれた「手しごと」があった。なぜかいつも手作りに込められた人の愛情とぬくもりに惹かれていた。大分市で生まれ育ち、20代でヨガに出合い、自然のなかで生活することに興味を持ちはじめ、暮らしの拠点を豊後大野へ移した。

原体験をきっかけにはじめた「手しごと商会」。地域でサークル活動をされている方々から声をかけ、次に声をかけたのが、道の駅で出品している作家たちだ。しかし、前途多難が待ち受けている。道の駅で出品している作家に知り合いはいない。直感で作家をセレクトし、直談判した。

「道の駅にいれば、きっと作家が来るはず。」そう信じ、道の駅で待ち伏せをすることもしばしば。なんとかこのプロジェクトを形にしたいという思いから、ありとあらゆる人脈を駆使した。そして現在では、少しずつではあるが「手しごと」の品々が集まるようになってきた。それらには、森さんが子どもの頃に感じた素朴な懐かしさと安心感と”そこにしかないもの”がある。

「最終的には道の駅にも出品していない手しごとをしている方々に巡り会いたいよね」

決して人からの評価のための表現ではなく、本当の楽しみとしてものづくりをする人生の先輩たちに出会い、昔から受け継がれてきた生活の知恵を自らの生活にも取り入れていくことができたらと嬉しそうに話す。

森さんがセレクトした「手しごと商会」の品々は、現在イベントなどでの出店で販売している。いまのところ店舗を構える予定はないが、情報発信のためのWEBページは今後開設する予定だ。ゆるやかに柔軟に小回りが効くように続けていくことが目標とのこと。本人曰く、どう発展していくかは未知で、展開は自分のやりたいことが湧いてきたときにと、自由度は高くしている。

「いまは地元・奥豊後のモノやヒトにこだわっていて、地元でできればなによりと思って常に探す目は持っているのだけれど、この先 “ずっと!” とか“絶対!”という頑固さはないんだよね」

 

手しごとからみえてくる作り手の人生

なにかを選ぶひとつの理由として、「ストーリーがあるか」ということに興味を持っている人は少なくはないだろう。自由に選択できる世の中だからこそ、じぶんの身の回りには選び抜いたものを置いておきたい、そんな人がきっと増えているのではないだろうか。「手しごと商会」の品々にも、作り手ひとりひとりのストーリーがある。

手しごとにはその人の心が通っているの。いろんな思いから、それが形になることはすごいことで、『なぜか惹かれる』をあえて言葉にするならそういうことだと思う

 

田舎にはなにもない?実はそうでもない

全国各地で、若者や移住者の活躍が注目される。だが、森さんが注目したのは地元で昔からの手法でものづくりをしていた60代以上の方々だった。「きっと、みんな思い描いていたのでは? 動いてみた!というのがわたしだったのかも」と話す。高齢化が進んでいる現代において、森さんのような活動が仕事のあり方のひとつの方法になっていくのではないだろうか。田舎にはなにもない、そういわれてきた時代も変わろうとしてきている。

 

取材・文=廣瀬凪里