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2019.06.28

おせっかい

小さな町の商店「ヤオヤダエン」の快進撃〜地域商店とビジネスのカンケイ

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豊後大野市三重町に小さな八百屋がある。「ヤオヤダエン」だ。2018年6月にオープンしたダエンは、玉ねぎ1玉20円の安売りやサブスクリプション(定額制)など既存八百屋にはないようなユニークな施策で市内外で注目を受けた。翌年6月には、大分市内の中心部にオープンした大型商業施設「大分OPA(オーパ)」に出店。田舎町から産声をあげた小さな八百屋が大型商業施設に出店する快進撃を見せている。このお店を切り盛りするのが、2017年1月に大阪からUターンしてきた玉田直也(33)さんだ。

実家は廃棄物リサイクル業を営み、大学進学のために大阪へ。大学を卒業後、いずれは大分へ戻る前提で人材派遣会社へ就職し、営業や企画などを学んできた。さらにキャリアアップをめざしたいとコンサルティング会社へ転職。フードコンサルタントとして従事してきた。2017年1月、家業とこれまで仕事としてきたフードコンサルタントを活かした”ロクジカプロジェクト”としてB to B向けの卸しをはじめるために豊後大野市へ戻ってきた。

ジャガイモ不足でもジャガイモがある現状に違和感を覚えた

そんなとき、ある事件が起きる。イモ不足によりポテチ製造休止ーー2017年4月、カルビーや湖池屋が原料のジャガイモが不足したために製造が休止するというニュースが流れた。ちょうど玉田さんが前職のフードコンサルタントを活かしてB to Bの食材の卸しの仕事を豊後大野ではじめていた頃の話だ。

「北海道はジャガイモ不足と言っているのに、大分県産のジャガイモは余っているほどだった。単純にこれを使えばいいのに」と野菜の流通に違和感を覚えた。生産者からは「ジャガイモが余っているから、玉ちゃんどこかに売ってくれない?」と相談を受けた。少し形がいびつで決して味は変わらない”規格外品”の量を目にした。この一言がきっかけとなり、自身のフードコンサルタントの名刺代わりとなる八百屋ダエン(現・本店)をオープンさせた。

井の中の蛙だった。商業施設への出店で味わう知識不足と挫折

オープンから1年後、大型商業施設・大分OPAへ出店。順調に見える出店だが、決して順風満帆ではなかったようだ。

「大分駅近くの中心部の大型商業施設は、幅広い年齢層のお客さんが毎日数千単位で出入りする。不特定多数のお客さんを前にどのようにお店の良さを伝えていけばいいのか。まったく知識がないことに気づかされたんです」

豊後大野市では、毎日来てくれるお客さんの顔が見えた。むしろ一見さんが少なく、毎日買いにきてくれる常連さんばかりだった。しかし、大型商業施設となるとそうはいかない。完全に”井の中の蛙”だったことに気がついた。

いくらヤオヤダエンだけで頑張ったってどうにもならない。自分たちだけでやるのは限界だと感じた。必死になって答えを探していると”20坪で売上日本一”と言われる人気八百屋「やおや植木商店」に行きついた。業界でもその名前を知らない人がいないほどの八百屋の名店。すぐさまアポを取り、現場を見に行った。度肝を抜かれた。立地はスーパーの向かいにありながら、八百屋に行列ができていた。「八百屋の概念が全て崩れた瞬間だった」と玉田さんはいう。

初めて頭を下げた。基礎を学ぶ姿勢で挑む

やおや植木商店は週末に延べ4,000人が来店し、品種、値段が安い。今の自分にないものがそこにあった。

「きっとこのままではOPAに出店しても何もできないんだろうなと不安がありました。でも、基礎を学べば十分やれる勝算はあると思っています」

今まで何でも強気な姿勢で一人でやってきた。大規模展開を前に、初めて頭を下げた。ライバルといえば、ライバル。しかしとてもじゃないけど敵わないと思った。

「日本一の八百屋のやおや植木商店さんから店舗のあり方と八百屋としてのノウハウを一から基礎を学ばせてもらえる機会はとてもありがたい。だからこそ今回のOPA出店も「produced by やおや植木商店」としてサポートに入ってもらうことになりました」

その土地、その業界の基礎の部分は知らずに飛び込んだ。だが今はOPAでの営業が日々学びしかないという。


”マーケットを広く捉えてスキルを学ぶ”重要性

名刺がわりでの八百屋の開店。わずか1年で大分OPAでの2号店出店。この田舎町の小さな店舗の快進撃の原動力は何だろうか。

ローカルパワーで”世界”を刺激したいんですよね。ローカルにいる人たちに良い刺激を与えられるようになりたい。だからこそ、僕たちは地産地消ではなく、”地産他消”にこだわっていきたい。豊後大野のものをもっともっと外の人に知ってもらうために、今回の2号店の出店があるんです」

人口減少と少子高齢化が進んでいる地域において、地のものを地で消費するのには限界がある。だからこそ、外へ目を向けることで、既存のマーケットよりも広く捉えることこそが地域の商店がビジネスを活性化することに繋がるのでは、と玉田さんは分析する。

「あとは学びですよね。マーケットを捉えてそのマーケットに合わせた知識を学ぶことが重要。個の商店だけで戦うにも限界がありますよね。だからこそコミュニティーも必要で、コミュニティーを強化して組織立ててうまく活用することこそが、地内外、国内外で戦う秘訣だと思います」

玉田さんの動きを見れば、豊後大野に留まらず竹田市や大分市でのマルシェの参加や市外への店舗の出店、福岡や県外との人の繋がりを作るなど積極的だ。常に学ぶ姿勢や市外で展開されているものをよく観察し吸収して八百屋に活かしている。さらに地元「豊後大野」の土地の名を八百屋を通して、野菜を通して発信し続けている。小さな町から始まった八百屋の快進撃はまだまだ始まったばかりだ。

 

取材・文=髙橋ケン