2019.03.08
遊ぶ
大分と熊本を結ぶJR豊肥本線。沿線に「犬飼駅」「菅尾駅」「三重町駅」「豊後清川駅」「緒方駅」「朝地駅」の 6 つの駅を持つ豊後大野市には、鉄道ファンならずとも、つい写真を撮りたくなる「景観×列車」のフォトスポットがあることをご存じだろうか。
今回は、われわれ豊後大野カンケイ協会が、“豊後大野市を代表する鉄道ファン”と認定した鉄ちゃんに、イチオシの撮影スポットと撮影のポイントを教えてもらいました。
案内してくれた鉄ちゃんは、大分市出身、豊後大野市在住の山田哲平(29)さん。
山田 哲平
山田 哲平
ファン分類:乗り鉄
好きな鉄道:JR九州、近畿日本鉄道
好きな列車:ゆふいんの森号
鉄ちゃん歴:21年
今一番乗りたい電車:観光特急しまかぜ
カメラ愛機:Canon EOS 80D
小学校4年のときに出合った「特急ソニック」のデザインに惹かれ、鉄道に目覚めた山田さん。以来、電車旅の定番である「青春18きっぷ」を使って日本全国の鉄道を楽しむのはもちろん、韓国や台湾など世界の鉄道も乗り歩いてきました。
最近では北九州の筑豊電鉄に乗ったり、熊本博物館へSLを見に行ったり、廃線跡を歩くことも好きだと話す山田さんは、景色とそれに合うような車両が走っていると最高に萌えるのだとか。
「例えば『ゆふいんの森号』は、列車のグリーンカラーと緑豊かな自然の中を走る風景との相乗効果がサイコーなんです。沿線は天ヶ瀬温泉や慈恩の滝、伐株山、豊後森機関庫など様々な見どころがありますし、車内もアテンダントによる沿線案内やビュッフェといったサービスも充実しています。そういう列車は鉄道に興味がない人でも満喫できるし、そういうところから鉄道に興味を持ってほしいし、仲間がもっと増えると良いですよね」
と待ち合わせ早々、勢いよく走り出した鉄道トーク。止まらない会話にブレーキをかけて企画の趣旨を説明すると、
「僕、列車は乗る専門の乗り鉄ですよ」
え?
「中学校のころからカメラはしているんですけど、スナップ写真が中心で、走る列車はちょっと…」
えーーーーー!!?
といったやりとりはありつつも、山田さんは写真展で賞を受賞するほどのカメラの腕前。さらに列車に対する愛情、さらには豊後大野が好きだという情熱がハンパじゃありません!彼がオススメするスポットは鉄道ファンのみならず、写真やインスタ映えするスポットがたくさんあります。
さあ!鉄ちゃん・山田さんプレゼンツ”乗り鉄による撮り鉄のための旅”へ出発です!
約1億年前の地層が残る「大野川層群」や、約 9 万年前阿蘇火山の噴火によりどっと押し寄せてきた火砕流によって生まれた柱状節理や渓谷、滝。さらに加工しやすい阿蘇溶結凝灰岩で作った石橋、磨崖仏などさまざまな地形・文化の遺産を持つ豊後大野市。地球科学的な価値を持つ地域に認められるジオパークにも認定されており、その美しい自然景観を列車から見ることができます。
「豊肥本線を走る列車は、特急が数多く走る久大本線に比べたら平凡なものが多いんですけど、景色は負けてない。 1 年中キレイな景色が楽しめますよ」
ジオパークにも認定されている景色の中で走る列車、それは期待が高まりますね、山田さん!
その 1. 太陽の光は順光!
カメラの背後から列車に向かって光が当たっている状態だと列車の車体がはっきりと写り、オススメ!
その 2. シャッタースピードを速く!
マニュアル撮影の設定ができるカメラは、絞り優先モードに設定し、F値(絞り値)を小さくしてシャッタースピードを上げる。被写体が暗いときは、ISO感度を上げることでシャッター速度を稼ぐことができる。慣れないうちは、とにかく連写でベストな一枚を見つけるべし!
その 3. 乗り換え案内アプリを使って、撮りたい列車を狙え!
一般の列車はスマートフォンの乗換案内アプリでも時刻を検索できるので、そこから通過時刻を確認して撮影しよう!
待ち合わせ場所の三重町駅を出て1カ所めに訪れたのは、千歳町の柴山。県道636号線から「豊後大野市白鹿浄化センター」を目指して細い山道を進んでいると、大野川沿いにおおきな赤い橋が現れました。
「このプラレールのおもちゃみたいな橋がすごく良いんですよね。しかもこのあたりは川の両側が大野川層群と言って、1億年前の古い地層なんですよね。近くにジオサイト(編集部註:ジオパークの見どころとなる場所のこと)になっている『手取蟹戸(てどりかんど)』と呼ばれるスポットもあるので一緒に楽しめますよ」
周辺の観光案内まで完璧なのですか…すごすぎる。
「もうちょっと奥まで行ってみましょう」
そう言うと、橋がある場所から徒歩3分ほどの場所へ。そこには赤い橋を渡る列車を正面から撮影できるベストスポット!
「乗り鉄だから」と言っていたのに、1カ所めからすごいじゃないですか!
「線路を跨ぐ陸橋の上から、鉄橋を渡る列車を撮影できます。春には桜も咲くし、これからの時期は特にオススメですね」
2 カ所めは、鉄道ファンならきっと知っているであろう人気のフォトスポット。大正 11 年に豊肥本線が三重町−緒方間で延伸開業をした際に合わせて建設された「岩戸鉄橋」です。鉄橋を通って阿蘇溶結凝灰岩の岩壁に掘られたトンネルへとスッと吸い込まれて行く列車は、ジオパークであるここでしか見られない風景です。この周辺の景色は、「岩戸の景観」というジオサイトにもなっています。
「阿蘇山は 4 回噴火しているんですけど、 3 回目の噴火が 12 万年前、 4 回目が 9 万年前にあって。その層の境目もここは見ることができるんです。ちなみにトンネルは 3 回目の噴火があったときの地層。4 回目よりも柔らかくて彫りやすかったらしいですよ」
岩の中をくり抜いてトンネルを造った場所は久大本線にもあるそうですが、規模は岩戸鉄橋の方が大きいのだとか。
「夕方だと岩戸の岩壁がちょうど順光になるんですよ。列車の撮影は順光が基本ですから、光の状態が鉄道ファン的には最適。観光列車の『特急あそぼーい!」も通りますし、クルーズトレインの『ななつ星in九州』も毎週走っているので、太陽の位置や時間、天候、通過する車両、すべてのタイミングがバッチリ合えば最高の 1 枚が撮れます!」
「あと 5 分で列車が到着しますから、構えてください!」山田さんの完ぺきなアテンドで、夕方 16 時ごろ『特急・あそぼーい!』が鉄橋を渡りトンネルへと向かう姿を激写。
こちらが、山田さんが撮影した写真。 鉄道愛が伝わってくる写真ですね。
「下から煽り気味で撮ると良い感じになりますよ」
最後に訪れたのが、国道 502 号線の緒方町馬場の交差点から『俚楽の郷伝承体験館』へ向かう途中にある『岩鼻踏切』。田園風景が広がる緒方町では春には菜の花が咲き乱れ、夏には眩しいほどの緑の稲が覆い、秋には稲穂とススキが揺れてドラマチックな雰囲気に包まれます。
「踏切から緒方駅方向を向くと、奥に見えるのが久住山です。ここでの撮影は望遠気味で山と列車が近づくように撮影するのがオススメです。時間帯は朝を狙うと順光で撮ることができるので良いかもしれません」
赤や黄色の列車が走る豊肥本線。田園風景とのコントラストもまた美しく撮れると教えてくれました。
「あの看板は線路の傾斜を表しているんですが、そういう看板と線路沿いの花を一緒に写すのも良いですよ」なるほど。標識看板を入れるとさらに写真の味わいが増すわけなんですね。
鉄ちゃん・山田さんが教える豊後大野市オススメ撮り鉄スポット
のどかな田園風景が広がる景色やジオパークと列車のコラボレーションが楽しめる鉄道ファンがオススメする3スポット。壮大な景色と一瞬で走り抜ける列車の撮影はドキドキ感があり、満足のいく 1 枚が撮れた際の感動はひとしお! 車窓から楽しむだけでなく、今年は撮り鉄デビューしてみませんか?
※線路などに立ち入ることは法律で禁止されています。また私有地に立ち入ることも禁止されています。私有地で撮影する際は、土地所有者の許可を事前に得て撮影は安全に撮影するようにしましょう。